サンセットグロー・ドリーム


変な夢を見た。


僕の隣には知らない女の子。

『私未来から来たの。』

『あなたの未来を知っているよ。』


変なヤツ。
女の子はそういうんだけど、
僕はなんだか怖くなって。


自分の最期は?


気になったのがそれだけで、
情けなくなりました。


『教えない。』


笑顔でそういう君は、
本当に未来から来たのかわかりません。

「未来はどんなところなの?」

『みんなロボットみたいだよ。技術が進歩して、天気だって変えられるようになったの。』


また笑顔でそういう君。
本当に未来から来たのかもしれない。
根拠のない確信が
僕には湧いていた。


『だから、ほんとの空を見たことがないの。』


今度は寂しそうに笑って、
僕の顔を見た。


『ねぇ、私、夕焼けが見たいな。』

「見に行こうか。」


夏の入道雲でさえ
ビルの残骸にかかってうまく見えない、この街だから、
まだ熱の冷めない道を歩いて
雑居ビルの屋上へ上がった。

そこには、赤く焼けた空。


君の目にはどんなふうに写っているんだい。

青いびいどろの目から
ぽたり、ぽたりと。

『きれい。』


未来人の君には、この雲さえ感動的で。

僕がはじめて見た空は
どんなだったっけ。

にじんだ空は、僕らの影を伸ばしていった。
どこまでも。


『もう、大丈夫。』

『さよなら、過去の人。』


そう言い残して、君は
未来に戻って行きました。


きっと、夢だったのかな。
でも、そこには確かに、
夕立ちのあとが残っている。

すぐ行くから、どうか、待っていて。


僕はもう、忘れてしまったけれど
忘れてくれるなよ、
はじめて見た空のことを。

あと何回、この焼けた空を繰り返して
あと何回、雨に打たれて
あと何回、晴れた空を見上げたら。

もう一度、未来で会おう。

そして僕は
今日も、今を生きている。