プロセス・プログラム

こんばんは、三月の雨にうたれて
今日はね、帽子をかぶってね
ズボンを履いてね
濡れたアスファルトをダッシュしました。
少年のようでしょう。


走っても結局濡れる。
冷たいんだって。雨。

とてもお家から出たくなくて、
ずっと王子様を待ってるのに現れなくて、
かぼちゃの馬車はいつ迎えに来てくれるんだろうって。
もうこんな時間!!!って
そんなかんじでホームを駆け出した中央線。


あのね、昔のことを思い出したいんだけど思い出せない時ってあるでしょう。

本に栞を挟んだまま
その本読んでたのも忘れちゃうのと同じさ。

ひとつだけ、春になると思い出せそうで思い出せないことがある。

小さい頃、私がまだ4歳くらいの頃。
家の近所にたんぽぽが咲いていて
たんぽぽのわた毛を飛ばして遊んでた。
近所じゃ見慣れない子が一緒になって遊んでたんだけど。
あの子の顔も名前も、思い出せなくて。

遊んだのもそれっきりなのね。

それでもね、その子が言った事は覚えてる。

「たんぽぽの種がたくさん飛んでいけば、来年もまたこうして遊べるね」
って。

そんな感じのことを言ってた。

きっと幼かった私は当然のようにまた遊べると思っていたのだ。

今思えばそういう意味だったのか。

私達はただただ幼かったのだ。


その次の年も、春になってもその子は居なかった。
もう何も思い出せないのだ。
だけれども、たんぽぽを見るとふと思い出す。

あの子は誰だったんだろうね。


そんな春の記憶。