デザリング・デザイン
桜を散らす霖がふりました。
待っていた時間は開けたはずなのに、見れば代わりに散ったピンクが悲しく濡れています。
早いものでもう四月もなかば。
心待ちにしていたものはすぐに過ぎて、また同じく繰り返される。
やっとの思いで会えたはずなのに、時間は経つのが早くて、すぐにお別れの時間になってしまうようなあの感じにとても良く似ているね。桜は。
増える吸殻を数えて今日も終わりました。
このしんみりした夜はどうしてかあてもなく暗がりを歩きたくなってしまって。隣に歩く人など居ないのに、それを知ってかまた、しんみりして。
視界を塞ぐ。 暗転。
一度目は偶然 二度目は奇跡 三度目は運命。
それが本当なら何度目の運命を繋いでいるのだろう。
今はその運命のまっただ中なのかもしれない。
メリーゴーランドが3周したあたりで、あのフレーズ。
「また春に会いましょう」
ああ、今日も言えない言葉をコーヒーと一緒に飲み込んでしまった。と、後悔したよ。
いつもそうなんだ。私はとても大切なことを忘れる。あの日どの服を着てたか、何時に起きたか、何を食べたのかなんて、どーでもいいことは覚えてるくせに。記憶力は無駄にいい、だから余計に過敏なんだ。
いつも、大事なことが言えないまま、出来ないまま。
応えてくれなくてもいい、見返りもいらない。
というのは綺麗事なんだ。
きっととても欲張りで、プレイルームのおもちゃを独り占めして遊んでたあの頃と何も変わっていなかった。
煩悩を捨てた仏陀は言ったさ。
「例え『これは自分のものだ』このように思っても死ねば失う。『自分のもの』という幻想に負けてはいけない」と。
執着を捨てた時に初めてそのものの意味が分かると。そんな事言われてもさ。
簡単に出来たら仏になってるわって話。
ただ、春の夜の夢の如し。
王子様のキスでいつまでも眠りたかった。
また、一人で夢を見るんだろう。