ジューン・ジョーカー
梅雨だ梅雨だと言っていたら
あと数日で夏の月がやってきます。
裏路地に咲くアジサイはとうに露をまとって
朝日をキラキラと反射していた。
ジメジメした熱気が髪にまとわりついて鬱陶しいね。気分が晴れない日が続いて
全てが嫌いになりそうだ。
家で聞く雨音はとても好きで落ち着くのに、傘へとやって来る雨の嫌なことといったらこの上ない。
いっその事、街中水に埋もれてしまえばいい。
ビルの海藻がゆらゆら揺れて、車のサンゴ石と飛行機の亀。
息の出来ない街。酸素は口移しでしか貰えませんか。
私、熱帯魚に似てるとよく言われてた。暖かい海でなきゃ生きていけないよね。
この街はとても冷たくて、私にはとても泳ぎづらいんだ。暖かい方へ、暖かい方へと探して行っても
みんな、みんな、時間が経つと冷えてしまう。
最初だけだよ、暖かいのは。
悲しいね。そのうち水温に適応出来ずに死んでいく。
空が落とした水たまりがやがて広がって
この街が海になったら、酸素ボンベを持ち出して独り占めするのもいいけど。
息をせずに静かに還るのも悪くないと思います。
つまりは、雨。
好きだけど、嫌いです。