グッバイ・ヒューマン


あるところに1人の女の子が居ました。
その子はとても弱い子でした。
強くなりたい、毎日毎日そう思いながら生きてきました。

ですが、

息をすることに疲れてしまいました。
理由はそう。簡単です。

心に
真っ黒い雲がかかりました。

息を吸う度に苦しくて、どうすることもできません。

自分がどうしてこんなに苦しいのか
女の子は小さな頭で考えても
答えは出ません。


女の子は、自分の真っ黒い心をかかえたままなんとか浅い息をしています。

いつ、呼吸が止まるのか。
女の子はその日を待ちわびるようになりました。

とっても馬鹿なのです。

死を迎えることは、誰だって怖いのです。


それでも、女の子は、その重い心臓をかかえて、絶え絶えになる息と鼓動を聞いています。


それを知った森の魔女が
女の子に呪いをかけました。

永遠の眠りにつく呪いを。
幸せな夢の中で、生きられる呪いを。

呪いをかけられた女の子。

夢の中で
愛されることと、愛することを知りました。
たくさんの人に会いました。
たくさん笑いました。
たくさん泣きました。


女の子は
白い部屋で1人
ずっと誰かを待っています。

それも全部
夢の中の出来事です。


自分で買った靴も
アクセサリも
お花屋さんになる夢も
幸せなはずの未来も
全部、夢の中です。


女の子はずっと夢を見ていたのです。


メルヘンチックな夢でしょうか。
メンヘラチックな夢でしょうか。

もう、夢でしかなかったのです。
呪いが溶ける前に。

女の子は魔女からもらった薬をのんで
また夢を見にいきます。

朦朧とする感覚の中で
いくつもの夢を見に。

もう、目を開けることはありません。
揺蕩う夢の中で、少女は永遠の眠りにつきました。

これが、のちの眠り姫のお話になるのは
まだずっと先のお話。



おわり